格子戸の奥、注連縄の垂れる暗がりに、円錐形の冠をいただいた石の像がひっそりと座している。木札は「権現社」、傍らの説明板は「清龍権現石像」と告げる。ここは常総市大塚戸、鬼怒川と小貝川に挟まれた低地に鎮まる一言主神社の境内——その隅に置かれた、小さな一つの祠だ。
まず土地から読む。この地は関東平野の水の器だ。二つの大河に抱かれ、幾度も水を被り、幾度も稲を実らせてきた低地であり、水は恵みであると同時に、荒ぶる龍でもあった。だからこそ、この祠に龍が座しているのは偶然ではない。清龍(青龍)は東方を守る四神の一であり、水と雨をつかさどる龍神だ。水に生かされ、水に脅かされる土地が、龍を祀る。
説明板が語るのは記録——「開山喜善法印」「開帳日傳法印」と、そこに並ぶのは僧の位である「法印」だ。「元禄三天午」すなわち元禄三年(1690年)の年紀、「末世開帳十二年目」の一句。これは仏の作法である。秘仏として厨子に納め、十二年に一度だけ扉を開いて衆生に拝ませる——開帳の慣わしだ(source=伝承)。つまりこの石像は、僧の名を刻んだ権現の石像として、この地に置かれてきた。神社の境内に、僧の名を刻んだ権現の石像がある。
本社の主・一言主神は、もともと大和・葛城の神である。日本書紀は雄略天皇が葛城山で出会った神として記す——「善事も悪事も、一言で言い放つ神」。良きも悪しきも一言で裁く、託宣の神だ。その神が遠く常陸の地に勧請され、この大塚戸に関東の一言主として根づいた(source=伝承)。水郷に近い低地は米をよく育て、この地の人々は稲と水の恵みを一言の神に願い、荒ぶる水を龍の権現に鎮めてもらった。神と龍、託宣の神と水の龍——二つの像が、一つの境内に並んで祀られている。
記録した写真
📍 36.011611, 139.927369(日本、〒303-0045 茨城県常総市大塚戸町875)