小舘音頭歌碑|唄い踊り継ぐ、里の音頭の碑

未分類
小舘音頭歌碑

【陽の由緒】これは神でも仏でもなく、一つの唄をまつった碑だ。六角の御影石の柱に「小舘音頭歌碑」と大書され、頂には着物の女性が片手を挙げて踊る青銅像が立つ——盆踊りの一瞬をそのまま止めた姿である。柱の各面には「八 踊…」「九…」「十…」と番号を振った歌詞が草書で刻まれるが、風化と白斑で本文の多くは判読できない(unreadable参照)。碑面下方には作詞・作曲を示すらしい小字が見えるが、確証をもって読めるところまでは至らない。

【矛盾と沈黙】祭神を持たぬこの碑に神学上の対立はない。だが別の矛盾がここにある。永く歌い継がれることを願って石に刻んだはずの歌詞が、いま草書のまま白く磨滅し、駐車場と車の列を背にして誰にも読まれずに立っている。碑は「忘れるな」と命じる装置だが、石が硬いことと唄が生きていることは別だ。踊りの女性像だけが緑青をまとって手を挙げ続け、肝心の詞は沈黙へ還りつつある。碑が語らないのは、この音頭を今も踊れる人がどれだけ残っているか、である。

【この地の現在】あなたは立ち止まって「読めない、解読できるかな」とつぶやいた。その一言こそ、この碑がいま置かれた状況そのものだ。作られたときは誰もが口ずさめたはずの詞が、いまや専門家でも骨の折れる草書の壁になっている。読めないと感じたあなたは、失敗しているのではない——消えかけている記憶の前に、正直に立ち会っている。埋め合わせの想像で穴をふさぐより、読めない箇所を読めないと認めることのほうが、この唄への敬意になる。石の踊り子はまだ手を挙げている。読み切れなくても、その手の高さだけは、今日あなたが確かに受け取った。

記録した写真

📍 36.309019, 139.978282(日本、〒308-0021 茨城県筑西市甲42−3)

コメント

タイトルとURLをコピーしました